正道有理のジャンクBOX

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― 他の動物より人間が優れているとすれば、蓄積された知識や経験から自分の行為がもたらす成果や結末を予測し得ることである ―

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安倍政権は選挙では勝利したが 政治的には敗北した

 自民圧勝の空虚なキャンペーン

安倍政権は第48回衆院選直後に「絶対安定多数を確保」「改憲を発議できる2/3を突破」と大々的なキャンペーンを張った。この結果が小選挙区制という、力のある大政党には決定的に有利で小政党には不利な、少数意見圧殺の制度の上にもたらされた結果であり、断じて容認できるものではない。この選挙を通じて、改めて小選挙区制への憤激が起きていることは重要なことだ。

そのことは置くとして、敢えて常軌を逸した冒頭解散を強行してまで総選挙に訴えておきながら、勝利と言うからには解散前と比べて何か決定的に有利な条件を手に入れたと言うことでなければならない筈だった。

しかし、選挙の結果は自民党単独過半数越え、かつ公示前の議席を維持しただけであり、連立の相手である公明党は5議席を減らしている。確かに激減という敗北は回避したものの、選挙前と変わらないのなら、何のために選挙に訴えたのか。

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選挙に賭けた安倍政権の勝算

安倍が冒頭解散ー総選挙を強行した理由は2つある。

森友・加計学園疑惑に対する人民の憤激が高まり、権力を私物化する安倍の国政運営に批判が高まり、政権支持率が急速に低下し始めたことだ。このままでは麻生内閣のように解散の時期を逸しかねない。これが解散を決断させた第一の理由である。

もう一つ、敢えて冒頭解散と言う無謀な方法に訴えたのは何故だったのかと言う問題だ。実は今次選挙を評価する上で重要なのはこちらの問題だ。

 安倍がこの選挙で狙ったものは野党勢力の解体、とりわけ民進党の解体だった。

 1)民進党の混乱を仕掛けた安住淳

野田幹事長の突然の辞任―後任人事の混乱―蓮舫代表の辞任―そして前原代表の選出、その出鼻挫く山尾志桜里氏の「不倫」スキャンダルと幹事長人事の再混乱。相次ぐ離党も含め、こうした一連の動きが、臨時国会の開催を要求している最中に行われること自身異様であった。

都議選の敗北を受けた直後には続投を表明していた野田幹事長が、突如辞任を発表したのは、蓮舫代表に対する不満が強くなる中で、幹事長の辞任によって事を収めようとしたからであった。

 しかし、蓮舫批判の急先鋒・安住淳は、グループ内外の主だった議員に蓮舫からの幹事長要請を受けないよう組織したのである。蓮舫は安住氏に直接幹事長就任を要請したが断られ、結局後任を決められないまま蓮舫は辞任に追い込まれた。

また、安住は伊藤詩織さんに対する昏睡レイプ犯・ジャーナリストの山口敬之逮捕を中止させた元警視庁刑事部長で、現警察庁刑事局組織犯罪対策部長の中村格氏と懇意であった。国会では性犯罪取締法の改正と絡んでこの問題も取り上げられたが、これを中止させたのは安住だと言われている。

また、伊藤詩織さんの代理人弁護士が所属する「松尾千代田法律事務所」の代表弁護士・松尾明弘氏は、山尾志桜里氏の夫・恭生氏が代表を務める会社(セレージャテクノロジー)の監査役であり、松尾氏自身も民進党に繋がりを持っていた。このことから、内調の描いたストーリーの中には「民進党がレイプ被害者の詩織さんを政治的に利用しようとしている、これはセカンドレイプだ」というような印象操作も組み込まれていたというのである。

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山尾志桜里氏のスキャンダルは、そうした背景の中で松尾法律事務所や山尾恭生氏周辺を内偵調査する過程で山尾夫妻の不和に乗じて民進党を貶めるために放たれた毒矢だったに違いない。

前原と安倍はツーカーの関係と言われているが、今回どこまで安倍との意思疎通があったのかは分からない。しかし、いずれにしても民進党の動きは官邸サイドが完全に把握した上で安倍の決断が行われたと考えても不思議ではない。

2)「希望の党」への不意打ちと小池の動揺

安倍が冒頭解散を決断したもう一つの理由は、小池新党の動きである。小池は、すでに春の段階から「希望の党」という党名を商標申請しており、新党の結成は時間の問題であった。しかし、小池は年内解散あるいは年頭解散という読みを持っていたに違いない。もし、解散時期があと数か月ずれていたら、様相はもう少し違ったものになっていただろう。「政権交代可能な政党」として打ち出す以上は最低でも233議席分の候補を揃える必要があった。しかし、結党間もない「希望の党」が全国の選挙区に候補を立てるには資金面は勿論、人選においても、また選挙区の支持の程度を分析するにしても全く間に合う筈はなかった。ここに民進党の議員を「希望」が公認するという強引なまでの苦肉の策が前原ー小池のボス交で決められる事になったのである。全く数合わせでしかないこの方針を民進党内に納得させるために、前原は敢えて無責任な説明で押し通すしかなかった。他方の小池も民進党の内部矛盾をそのまま輸入する訳にはいかず、「選別、排除」を口にするところに追いつめられてしまった。

つまり、ここまでは

民進党の解体と

②対抗する小池新党の出鼻を挫く

という安倍政権の作戦は功を奏したかに見える。

安倍を打ちのめした二つの指標

安倍はこの選挙において、すざましい有権者の批判、怒りが噴出するであろうことをある程度覚悟していた。だからこそ、その怒りを集約し得る野党の力を壊滅させることで議席減があったとしても反安倍勢力、労働者人民の無力感を突きつけることで政権の「危機」(これを安倍は「国難」と言い替えた)を突破しようとしたのである。

森友・加計に象徴される行政権力の私物化、憲法と民主主義を無視した政権運営に対する人民の怒りは、それを乗り切るために強行した臨時国会冒頭の解散―総選挙という暴挙を許すことはなかった。それを如実に示したのが「立憲民主党」の結成と「希望の党」に対する世論の反応であった。

立憲民主党への爆発的な期待と支持者の行動的エネルギー

f:id:pd4659m:20171104204745j:plain 枝野幸男氏が立憲民主党の結成を宣言し、党への結集を呼びかけたのは10月2日であり、選挙の公示までは1週間しかないというギリギリの時だった。

しかし、そこに至るまでの間、民進党・前原やそのグループに対する批判、怒りとともに「枝野はこのまま民進党と心中するのか! 今こそ党を割ってでも立ち上がるべきではないのか」といった叱咤と激励が無数に突きつけられていたのである。

こうして、満を持した形で「立憲民主党」の結党を宣言したその翌日にはtwitterのフォロワー数は7万を超え、5日後には15万を超える爆発的な期待と注目を集める事となった。

「公示日直後に勢いのある党は最後まで伸びる」と言われるが、まさに今回、その点で「希望の党」と好対照をなしていた。

こうした、立憲民主党に対する期待の広がりに対し、自民党・安倍首相の街頭演説は野次と抗議の声に迎えられ、ついには街宣スケジュールを公表できないところにまで追いつめられた。

そして、最終日の21日には体面を保つためにのみ秋葉原で街宣を行なった安倍は、日の丸を掲げた親衛隊を動員し、敗ける訳には

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いかない「こんな人たち」を排除することで己が如何に国民から拒絶された存在であるかを示しただけだった(写真下)

安倍が「敗けられない」と罵った「こんな人たち」が立憲民主党のもとに結集してしまったことは安倍にとって大誤算だったに違いない。

 (写真上は21日の新宿・立憲民主党

そして、選挙が終わった後もツイッター上では「自分たちに何か出来ることはないか」「立憲民主党に入りたいがどうすればいいか」と言った声が続いており、党と民衆の関係に新しい躍動が生まれている。

> 勿論、リベラルの結集を掲げ、また自らを「保守」と宣言する枝野氏の立憲民主党には、未知数な部分もあり、左からする批判があるのも確かである。それは別の機会に論じることとしたい。

②「希望の党」への失望=小池の本質が明らかになるにつけ、急速に支持を失ったこと。

立憲民主党への爆発的な支持とそのエネルギーの発現に対し、それとは逆の意味で人民の怒りを示したのが、「希望の党」への急速な支持の減少であった。

 いわゆる小池の「選別、排除」発言である。

小池は希望の党の公認条件として「改憲に賛成する」「安保法制に反対しない」という踏み絵を突きつけ、この基準で「選別・排除する」「全員を受け入れる気持ちはさらさらありません」と言い放ったのだ。 

 多くの有権者と人民にとって、この小池の言葉が「安倍の姿勢と変わらないものと映ったに違いない。

なぜなら、都議選最終日の秋葉原で「こんな人たちには敗けられないんです」と安倍が叫んだ時、その「こんな人」が抗議していたものこそ、「安保法制反対」「安倍は憲法を守れ」という事にほかならなかったのだ。

こうして「希望の党」への期待は急速に萎んでしまったのである。すでにお分かりのように、希望の党」の失速は他ならぬ安倍政権への怒りの裏返しであり、小池に安倍が投影された姿だったのである

 

「選挙での大勝」という言葉とは裏腹に、国会の会期を短縮するとか、野党の質問時間を議席数で配分とか常軌を逸した対応に血道を上げているのは、安倍政権が選挙を通しても尚、森友・加計疑惑に怯え、逆に選挙を通じて人民の政治的活性化を引き出してしまったという恐怖にさいなまれているからだ。

安倍は選挙で打ちのめされたのだ!