正道有理のジャンクBOX

正道有理のジャンクBOX

― 他の動物より人間が優れているとすれば、蓄積された知識や経験から自分の行為がもたらす成果や結末を予測し得ることである ―

正道有理のジャンクBOX

原発立地自治体の原発課税について

原発立地自治体の財政難を「原発税」で補填

立地自治体には電源三法(74年、原発建設ブーム時に田中政権によって施行された立地自治体へのカネのバラ巻き法=買収法であって、自立的な地場産業の発展を阻害し立地自治体の原発依存体質を強めてきた国家独占資本主義的政策の一環であった)に基づき巨額の交付金補助金が国から支給され、それを原資にして立地自治体は「地域振興」と称して「箱もの行政」を満展開してきた。しかし現在ではそれら支給金も圧倒的に減額し、地場産業も破壊されて少子高齢化が進み、それに加えて3.11以降にあっては自治体の財源であった原発は停止し、そのいくつかが廃炉となり始め、もって立地自治体の収入源が激減し、財政難が恒常的になっていった。

 そのようなことから、多くの原発立地自治体では、税収を確保・増加させるために、各自治体独自の条例をもって、原発それ自体への課税をあの手この手で行っている。

 自治体の「原発税」に先鞭をつけた福井県

 ① 稼働中の原発 ⇒ 核燃料税

原発への課税を最初に実行したのは関西電力敦賀原発など原発13基が立地する福井県である。

福井県は、1976年に県条例で安全対策、地域振興という名目を立てて、稼働中の原発に核燃料が装填されるたびに、その価格、重量に応じて課税する核燃料税(法定外税)を導入した。そして得られた税収を敦賀市などの原発立地市町村に「核燃料税交付金」として分配していったのである。

その後、この課税方式は他の自治体にも波及していき、2010年の時点では、13県で220億円にまで膨らんでいった。

 ② 安全の担保 ⇒ 使用済み燃料への課税

しかし、この課税方式はあくまでも原発の稼働が前提となっており、それは同時に使用済み核燃料を増加させていくことにもなる。そのようなことから、いくつかの自治体は、安全の担保料金として、2003年から使用済み核燃料に対しても課税するようになる。この方式を導入している自治体は、3県4市町で48億円になっているという。

 ところが、定期点検や相次ぐ原発事故などによって度々原発は運転を停止する。とくに3.11以降は全ての原発が運転停止となり、また新たな原発は建設しないという政府の方向が強まると、立地自治体における核燃料税の収入はいずれ途絶することが避けられないという事態に直面した。

 ③ 停止している原発にも課税

このような状況を敏感に感じ取った福井県は、新たに原発それ自体(稼働・非稼働は関係なく)の規模に対応して課税する「出力割」課税方式を導入した(2011年11月)のである。

これも他県に波及して現時点では12県150億円になっているという。

 ④ 廃炉が決まった原発への課税

2014年頃からは、東電の福島第1原発を先頭にして、各電力資本は再稼働を断念した老朽原発廃炉作業を決めていく。原発財政に依存してきた各自治体にとっては主要な財政源が相次いで消えていく訳である。このような現実に直面し、やはり福井県廃炉原発にも課税する制度を導入した(2016年11月)。 この課税方式は4県に導入され、現在その税収総額は48億円になるという。

  原発依存を温存したまま原発収入を追及する自治

 このような原発立地自治体における独自の課税方式(法定外税)は、あくまでも原発に依存しようとする体質を温存し、地域社会に密着した地場産業の育成を阻害するものである。

現行の原発政策が廃棄されずに存続する場合には、原発の変化する動態に対応した形で各種の課税方式を導入し、様々に形を変えながら他の自治体へと波及していくに違いない。

 「原発課税」は電気料金に上乗せして回収

普通、自治体が高額の税を掛けるのは大資本の進出を抑制し、地場産業を守る場合の方策である。それならば、電力資本はやがて原発から撤退するに違いない。停止中の原発廃炉原発にまで課税されると聞けばそう考えたくなる。

ところが、ここにカラクリがある。

これらの「原発税」は原発の所有者=各電力資本に課せられる。当然それは電力資本にとって負担になる。そこで電力資本はその税を彼らの営業活動として計上し、電気料金に上乗せするのである。つまり、「原発税」を徴収される電力資本は、その「原発税」分を含む電力料金を電力使用者=一般消費者から徴収し、自治体に還元するだけであり、決して自腹を切ることはないのだ。

 一般消費者の側からすれば、自分たちは高くなった電気料金を電力資本に支払うことにより、知らず知らずのうちに、原発立地自治体に納税していることになる訳である。政府が原発政策を根本から変えない限り、われわれ消費者は電力資本を救うために、政府と立地自治体の双方に、一方は国税として、もう一方は電気料金として税金を納める事になる訳である。

原発廃炉にしても忌まわしい負荷から誰も逃れられない 

このことは何を物語っているのか。原発は一度作らせてしまえば、廃炉が終了するまで、いや放射性廃棄物の処理・管理を含めれば数百年、数千年と人民に負担を強いるものなのだという現実を改めて認識する事である。

これは本質において、単純に政権が変わればどうにかなるものではない。好むと好まざるとに関わらず、原発を許してきたすべての人々の、こう言ってよければ全人類の責任であり忌まわしい負荷なのである。

 今すぐ、エネルギー転換=全原発の即時停止・廃炉

したがって、たとえ少しであってもその負担を軽減する道は何か。  

  • 自然エネルギーをはじめとした、クリーンでできるだけ費用の掛からないエネルギー政策に一刻も早く転換し、これ以上「核のゴミ」を増やさない事。
  • 新エネルギーへの転換で浮いたコスト分を「原発の後始末費用」に補てんし、少なくとも今以上に消費者に負担を強いることはさせない事。
  • 政府は電源三法の時のように、今度は立地自治体の原発依存から脱却する政策を支援し、奨励する事。
  • 各電力会社は、自治体の「原発税」を電力料金に組み入れるのをやめる事。