正道有理のジャンクBOX

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正道有理のジャンクBOX

― 他の動物より人間が優れているとすれば、蓄積された知識や経験から自分の行為がもたらす成果や結末を予測し得ることである ―

原発事故は地震や津波だけで起こる訳ではない

これまでの原発事故を見ると、システムの誤動作や人為的ミスが複合して起こっていることが極めて多いことが分かる。むしろ、地震津波といった要因は全体から見れば特異な条件に過ぎない。それだけ原発は完成されていないシステムだということなのだ。また、ECCS(緊急炉心冷却装置)も本来最後のよりどころである筈が、実際には、これが作動すると炉内圧力が急上昇し、想定外の事態に発展してしまう可能性がある。これまでの事故を見ても、ECCSの作動が逆に混乱を引き起こしているものもある。

   さらに、事故に対応する作業というのは高線量下で線量計を携行しての短時間作業を人海戦術的に行うことになり、精神的にも平時とは全く違った緊張状態を強制されること、こうした被曝作業の多くが下請けや非正規雇用労働者によって担われることが多く、全電源喪失などというような極限状態を想定した訓練(たとえば暗闇の中でいくつかあるバルブの一つを手動で開くなど)をすべての現場労働者に行っているとは考えられない。 
 経産省の官僚や政治家、電力会社の上層部はこうした現実を一切無視しており、原子力規制委員会が定めた新安全基準なるものも、およそこれらのことを全く考慮せず、机上でものを言っているに過ぎない。これまでの事故と、何よりも福島の教訓をつぶさに検証する姿勢があれば、こんな杜撰な規制基準で再稼動できるはずがない。
  事故はいつでも起こり得るし原発事故は一旦起きてしまったら止めることができない。できることの方が奇跡といった方がよいのではなかろうか。

【日本の原発事故】

日付 施設 事故原因 事故レベル 概要
1973.03.-- 関電美浜 1号機 燃料棒折損   関電は事故を公表せず。内部告発により明らかに
1974.09.01 原子力船「むつ」 放射能漏れ    
1978.11.02 東電福島第一 3号機 戻り弁の操作ミス 制御棒が5本抜ける。日本で最初の臨界事故。 3 午前3時から10時半までの7時間半臨界が続いた。この情報は共有されず、同様の事故が他の原発でも繰り返された。弁操作を誤ると炉内圧力が高まり、制御棒が抜けるという原発の本質的な弱点。
1989.01.01 東電福島第二 3号機 再循環ポンプ内部破損 2 炉心に多量の金属片が流出
1990.09.09 東電福島第一 3号機 主蒸気隔離弁のピンが破損。 2 炉内圧力が上昇し、「中性子束高」の信号が出て自動停止。
1991.02.09 関電美浜 2号機 蒸気発生器の伝熱細管1本が破断。 2 55tの一次冷却水が漏洩し、ECCS作動。
1991.04.04 中電浜岡 3号機 誤信号による給水量の低下。 2 自動停止。
1997.03.11 動燃東海再処理施設 火災爆発 3 低レベル放射性物質アスファルト固化する施設での火災、爆発事故。
1995.12.08 動燃高速増殖炉もんじゅ ナトリウム漏洩事故 1 2次主冷却系の温度計の鞘が折れ、ナトリウムが漏洩し燃焼。以来2010年4月まで運転を停止。
1998.02.22 東電福島第一 4号機 50分間にわたり、制御棒が全体の25分の1(1ノッチ約15㎝)抜ける   定期点検中の事故。137本の制御棒中34本が抜ける
1999.06.18 北陸電志賀 1号機 定期点検中。弁操作の誤りで炉内圧力が上昇、制御棒が3本抜ける。日本で2番目の臨界事故。弁操作のマニュアルにも誤記があった。 1・3 沸騰水型(PWR)原子炉。スクラム信号が出たが制御棒の挿入ができず、手動で弁操作をするまでの15分間無制御臨界に。事故を隠蔽していたが、保安院の指示で社内総点検の結果明らかに。8年近く経っての公表。
1999.09.30 東海村JCO 核燃加工施設 日本で3番目の臨界事故 4 核燃サイクル開発機構が高速実験炉「常陽」で使うウラン燃料の加工作業中の事故。ウラン溶液を移し替える作業中に臨界。致死量の2.5倍近い20svの中性子線を浴び、作業員2名が死亡。規定要領を逸脱した作業が行われていた。
2004.08.09 関電美浜 3号機 二次系配管破損事故。熱傷により5名死亡   2次冷却系の発電機付近の配管破損により高温高圧の水蒸気が噴出。逃げ遅れた作業員5名死亡。
2007.07.16 東電柏崎 刈羽 外部電源用の油冷式変圧器火災。   新潟県中越沖地震ににより発生。火災のほかに高波による冠水で使用済み燃料プールの冷却水の一部が流出。
2010.06.17 東電福島第一 2号機 制御板補修工事ミスから緊急自動停止   常用系電源と非常用電源が外部電源に切り替わらず、冷却ファンが停止。その間水位が2m低下。30分後に非常用ディーゼルエンジンを作動できたが燃料棒露出まであと40㎝(6分)だった。
2011.03.11 東電福島第一 1-3号機 非常用を含む全電源喪失炉心溶融、水素爆発。燃料は圧力容器を突き抜け格納容器下部に落下。 7 東北地方太平洋沖地震とその後に発生した津波により、緊急停止したものの圧力容器内の水位が低下。非常用電源も故障したためECCSも作動せず。水蒸気爆発を回避するためベントを行った。しかし、その直後に水素爆発。ベントおよび爆発により大量の放射性物質が大気中に飛散。日本初の原子力緊急事態宣言が出され、半径20㎞の住民に避難指示が出された。



【海外の主な原発事故】

日付 施設 事故原因 事故レベル 概要
1952.12.12 カナダ・オンタリオ州 チョーク・リバー研究所 操作ミスにより制御棒が引き抜かれ、1万キューリー(3億7千万M㏃)の放射能が漏出   出力43万kwの実験用原子炉事故。
1957.09.29 旧ソ連ウラル地方(現ウクライナ共和国) 冷却不能から爆発。200万キューリー(740億M㏃)の放射性物質が飛散。   核兵器プルトニウムの生産炉、および再処理のための施設。事故は極秘にされていたが、亡命科学者ジョレス・A・メドベージェフ氏によって明らかにされた。
1957.10.10 イギリス ウインズケール原子炉 核兵器プルトニウム生産炉。減速材の黒鉛が過熱し炎上。   水素爆発を回避するために注水に時間がかかり、16時間燃え続けた。多量の放射性物質が外部に放出されたが、事故は30年間秘密にされ、地元民も避難しなかった為数十人が白血病で死亡、今日でも白血病発症率が極めて高い。
1959.07.13 米・カリフォルニア州 サンタスザーナ野外実験所 ナトリウム冷却原子炉の燃料棒が溶融。   1979年まで極秘にされた。5千500万―2億4千万M㏃のヨウ素131と4800万M㏃のセシウム137が放出されたとみられており、その後もプルトニウム239、コバルト60などが高い数値で検出された。
1961.01.03 米・アイダホフォールズ 海軍用試験炉 運転員死亡により詳細不明、制御棒を誤って引き出しすぎ暴走したと考えられている。死者が出た最初の原発事故。   制御棒を必要以上に引き抜いたため瞬時に高圧の水蒸気が発生し、炉が破壊された。炉内の核生成物質の1%が放出され、2人が即死、もう1人は数日後に死亡。
1963.10.-- 仏・サン・ローラン・デ・ゾー原子炉 燃料溶融    
1966.10.05 米・デトロイト エンリコ・フェルミ1号炉 高速増殖炉・試験炉。炉心溶融   世界最初の炉心溶融事故と言われている
1973.11.-- 米・バーモント州    ヤンキー原発 沸騰水型原子炉 炉心の一部が臨界   検査のため抜いていた制御棒の隣の制御棒まで抜いてしまい炉心の一部が臨界に。
1979.03.28 米・スリーマイル島原発事故 二次冷却水の濾過器不調に端を発し、水素爆発、炉心溶融に至る。 5 二次系濾過器の不調により主ポンプが停止、原子炉も自動停止し核反応止まる。バルブを開き忘れにより補助ポンプ作動するも機能せず。一次冷却水の冷却ができず、高温になり圧力も上昇。逃し弁から放射性物質を含む蒸気が一気に噴出、炉内圧力が低下。2分後にECCS高圧注入系作動、4分後に加圧器の水位計針が振り切れたためECCSポンプを手動停止、水位が戻ったところでECCS再起動。逃がしタンクの安全弁を破り、格納容器内に熱水と蒸気が充満、更に補助建屋内にも流れ込む。3時間15~50分、2度の水素爆発。10時間後炉心部分溶融、再度水素爆発。
1986.04.26 旧ソ連 チェルノブイリ 4号機 試験運転中の不安定な状態からの暴走。冷却水が急激に沸騰し、圧力管破裂、さらに発生した水素により爆発・炎上。炉心溶融、燃料を含む大量の放射性物質が環境中に飛散。 7 緊急停止時に余熱でどれだけの発電が可能かを実験する為、出力を極端に落としていったところ不安定になり暴走。4秒間で出力が200倍にもなり沸騰した冷却水が圧力管(黒鉛チャンネル沸騰水型原子炉で小分けした燃料入れている管)を破壊、同時に高温の水蒸気が燃料被覆管の金属と反応して大量の水素を発生・爆発。放出された放射能ソ連当局の発表でも3兆7千億M㏃。死者はWHOの共同調査で9千人と評価されたが、14年後の式典では事故処理に係った作業員85万人中5万5千人が死亡したと発表されている。この事故により世界の広い範囲が放射能で汚染された。
1987.07.-- スウェーデン オスカーシャム原発3号機 試験中の臨界事故   制御棒の効果を調べるために抜いていたところ想定外の臨界に。
2008.07.07 仏・トリカスタン原発 ウラン溶液3万リットルが流出   ウラン溶液貯蔵タンクのメンテナンス中の事故。職員100人が被曝、74㎏のウラニウムが河川に流出。