正道有理のジャンクBOX

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― 他の動物より人間が優れているとすれば、蓄積された知識や経験から自分の行為がもたらす成果や結末を予測し得ることである ―

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「福島エートス」について考える ― 住み続ける為のハードルは低くない。

福島では被曝から(子どもの)健康を守る為に疎開すべきとする人と(やむなく)残留を望む人とで意見が分かれている。どちらも幸せを望んでいない訳ではない筈だ。疎開するには、転地先での人間関係の確立や着地するまでの生活の問題が、また残留するには高線量下で可能な限り被曝リスクを下げる為の正確で、きめ細かな情報の提供が必要だ。

 疎開している知人が、久々に福島に帰ったら関東のスーパーには凡そ並べられない様な物が沢山売られているのを見て愕然とした、と話していた。「食べても安全」と言うようた医学者が巾をきかせている様では、とても食の安全を確保するのは難しいだろう。
 これは医療の面でも同じだ。人工の放射性物質は自然放射性物質と違い体内に蓄積し内部被曝をもたらす事。この事実を認めるか認めないかで、科学者も医学界も、そして政治も真っ向から対立してきた。これは、日本に限らず原子力産業を推進する国に共通した問題だ。更に、国際放射線防護委員会(ICRP)も原子力産業(=核製造)の存続と利益を損なわない事を前提とする組織に性格を変えてしまっている。

 ICRPは一般住民の健康を守る組織ではない

ICRPの前身であるIXRPCでは放射線医学、放射線遺伝学の専門家を中心とした委員のもと被曝限度量はより低いものに見直されてきた。しかし、1950年の再編により、原子力関係の専門家も委員に加わるようになると、許容線量の指針は原子力産業の利益を阻害しない方向へと少しずつ変えられた。更に、当初は主に放射線従事者を想定していた被曝許容線量を一般人にまで適用させた。おりしも大国間で核実験が行われ、またウラン採掘や原子炉周辺での低線量被曝が問題になりはじめた時期である。

  ICRPが主導ないし支援する「福島エートス」を考える場合、こうした前提を抜きに考えることは出来ない。敢えて、その賛否は言わない。が、どんなことをやろうとしているかで自ずとその狙いは明らかになるだろう。
 福島の地に住み続けたいと言う人に対し、食の安全を確保する方策を明示する事、狭い区画での線量マップを作成し(低線量区画での)居住や耕作の自主管理が出来るようにする事。子ども達の生活エリアは、とりわけ徹底した除染と線量管理を行い、また定期的な健康診断を行う事。全ての医療機関は被曝の不安を抱える住民に真摯に向き合い相談に乗り、医療を施す事(現実は心配いらない、と追い返されている状態なのだ)。
 つまり、低線量被曝が危険だと言う立場に立たない限り、こうした方策は実現しないだろう。