正道有理のジャンクBOX

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― 他の動物より人間が優れているとすれば、蓄積された知識や経験から自分の行為がもたらす成果や結末を予測し得ることである ―

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「内部被曝」の暴露こそ核心

急性放射線傷害は短い間にある一定の量の放射線を浴びると皮膚など体の組織が破壊され傷害が現れる。この時の放射線量がしきい値あるいは被曝許容量とされる。因みに8シーベルト以上の放射線を浴びた場合の死亡率は100%と言われている。     
これに対し、飲食物や呼吸によって体内に蓄積された放射性物質放射線によって被曝するのが内部被曝である。内部被曝では即時的な障害が現れることは少ないが数年~十数年以上を経過してガンや白血病の発生のような障害が現れる晩発性障害と後世代に現れる遺伝障害がある。
 晩発性障害や遺伝障害にはしきい値はない、と言うことは低線量放射線でも危険だということになる。しかし、依然として推進派科学者は低線量放射線であれば体に有益である(「ホルミシス効果」論)とする説をとる向きが多く、「低線量放射線を長時間照射する方が、高線量放射線を瞬間照射するよりもたやすく細胞膜を破壊する」(「ペトカウ効果」理論)という説との対立が続いている。

「低線量放射線が危険だ」というと、医療用X線や自然放射線ラジウム温泉などを例に反論する者もいる。ここで自然放射線、人工放射線という言葉に惑わされてはいけない。放射性物質が出す放射線自体は自然核種であれ人工核種であれα線β線γ線などに変わりはない。体内に蓄積されるのは人口放射性物質であり、自然放射性物質ではない。人類の長い進化の過程で自然放射性物質に適応できないものは淘汰され、これを体内に蓄積しないような代謝の方法を作り上げてきた。しかし、歴史の浅い人口の放射性物質は体内に蓄積され、それが放つ放射線によって細胞が破壊されるのである。(市川定夫著「環境論」に詳しい)

内部被曝とは、細胞の中のDNA分子に放射線があたり分子中の電子をはね飛ばしたり周辺物質をイオン化する等によりDNAを破壊する。変異した遺伝情報をもつ細胞が分裂することで体組織に障害をもたらす。
 破壊され変異したDNAををもつ細胞分裂が骨髄で起きれば白血病などに、生殖細胞で起きれば後世代の遺伝障害となる。細胞中の分子が破壊されるのは放射線量の大きさではない。一発の放射線でも命中する事はあるからだ。少ない放射線でも長い期間曝されれば確立は高くなる。内部被曝を考えた場合、許容放射線量なるものはない。また「食べた場合でも大半は排泄される」論も嘘。20mSvは論外で1mSvだって確率的には障害が起こりうる。

 福島第一原発事故直後には、どちらかと言えば空間線量の高さが問題視されてきた。それが事故の深刻さを表しているからであり、また内部被曝との関係からは直接吸引することになるから当然ではある。しかし、事態の長期化と共に放射能汚染が拡散し、必ずしも空間線量の高くない地域ですら食品等の放射能汚染が問題になり内部被曝への関心が高まっている。原発に限らず、核兵器を含めた原子力政策の推進者達は、これまで内部被曝の危険性その脅威をできるだけ知られまいと、その隠蔽と打消しの論理を作り出すために膨大な費用をつぎ込んできた。その意味で、何よりも最大の核保有国・アメリカ帝国主義福島第一原発の早期の収拾を望んだに違いない。大事故を起こすまでもなく、核の生産=原子炉の運用は被曝労働なくしては成り立たないものであり、また微量の放射能汚染に晒され続ける原子炉周辺の住民は常に内部被曝の脅威の中に置かれてきた、これはアメリカにおいても全く同じである。日本の反原発運動が内部被曝を告発し続けることは、ひとり日本における原発廃止の運動にとどまらず、すべての核(兵器)に反対する世界的な運動への新たな道を開くものになるだろう。それは原水禁運動がもっていた一つの限界を乗り越えるカギでもあるように思える。