正道有理のジャンクBOX

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防衛予算、膨れ上がる後年度負担の陰で急速に進む自衛隊の外征軍隊化

海外での実戦訓練に重心を移した「30防衛大綱」「31中期防」

 昨年12月、安倍政権は新しい「防衛大綱」と「中期防」を閣議決定した。

 日本の自衛隊は、これまでも中東侵略戦争を想定した日米合同訓練を重ね、国際貢献を名目に参戦し、今やジブチ自衛隊の軍事基地を構えるまでに既成事実を積み上げてきた。
その上で、新防衛大綱の決定は、安倍政権による集団的自衛権行使容認の閣議決定(14年7月)を転機にして、従来の専守防衛路線から日本の安保防衛政策を大きく転換させたことを国際的にも国内的にも明確にさせたものである。
それは以下に示す流れをみれば明らかであろう。

 安倍政権は2014年4月1日に、武器輸出三原則を破棄し、これに代わる新たな政府方針として『防衛装備移転三原則』を閣議決定、同年7月には集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。歴代政権が堅持し続けてきた防衛指針に関わる原則をいとも簡単に一片の閣議決定によって捨て去ったのである。

 以降、2015年9月17日―安全保障関連法(自衛隊法の改定も含まれている)の強行採決、同年11月3日―日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定、これを受けて2016年11月には南スーダンに派兵される自衛隊に「駆け付け警護」(改正PKO協力法3条5号)「宿営地の共同防護」(改正PKO協力法25条の7)を命令。さらに2017年4月には米艦防護のための自衛隊派遣(改正自衛隊法95条の2 )を発令した。これらの内容は、あまり報道もされないまま常態化しており、米艦防護は2018年だけでも18件に上っている。
 また、2018年9月には、改正PKO協力法3条2号に基づいてシナイ半島への自衛隊派兵の検討が始められている。これは「国際連携平和安全活動」(略せば「国連平和安全活動」となるが内容は全く違う)と呼ばれるもの。従来のPKOが国連の要請という形をとっていたのに対して、これは多国籍軍としての参戦に道を開くものである。事実、こうした実践訓練は陸自に創設された「水陸機動団」=日本版海兵隊をも伴って頻繁に行われるようになっている。

 沖縄の辺野古基地建設が安倍政権の積極的意思で進められている背景には、将来この「陸上自衛隊水陸機動団」(日本版海兵隊)の共同訓練基地として活用しようという目論みがあるからに他ならない。
 その他の動きとしていくつか挙げておくと
●2018年9月27日 核搭載可能な米空軍B52と空自戦闘機が共同訓練。東シナ海で空自那覇基地のF15
 と編隊飛行訓練。九州沖で築城基地のF2と訓練
●2018年9月8日~10月23日 米比合同訓練「カマンダク」で「水陸機動団」(日本版海兵隊)が上
 陸訓練。海外の海岸での上陸訓練は戦後初めて
●2018年10月5日~19日 「水陸機動団」が米海兵隊種子島で共同訓練。自衛隊の演習所以外の日
 米合同訓練は日本初。

 こうして安倍政権は、日米同盟の強化=米軍の指揮の下でその一翼を担うという形をとりつつ日米共同作戦態勢の強化を推し進めるとともに、防衛省自衛隊における軍令系統の権限を強化し、自衛隊の外征軍隊化=侵略のための軍隊化へと部隊編成、攻撃型兵器体系の配備、海外基地の確保、激動するアジア全域での海自の共同訓練活動(さらには中東における陸自の共同訓練)という憲法9条を大きく突き破る既成事実を積み上げ、その延長上で本格的な明文改憲を成し遂げようとしているのだ。

 これらの一連の動向は、単に安倍政権の意思としてではなく、日本の支配階級(政府・財界)がこれまでの専守防衛に特化するという立場を転換し、戦後憲法という制約を取り払い、海外の戦場・紛争地域に積極的に自衛隊を派兵して「人道支援」「復興支援」を口実としつつ自国の利権を守るために軍事力を行使する方向に大きく踏み出そうする欲求の現れである。

 では、このような衝動を強めている背景はどこにあるのか。
それは、日本経済の動向、その構造的変化の中にヒントが隠されている。

日本の経常収支の推移を見ると、2000年代前半まで続いてきた黒字は、リーマンショックが発生した2008年には大きく縮小した。それまで経常黒字の大きな要因であった貿易収支の黒字が大きく減少したためである。

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この貿易収支は、東日本大震災が発生した2011年には、原子力発電所の停止などに伴う原油などの輸入の急増と価格の上昇等により貿易収支は赤字に転化し、それ以降2014年まで4年連続の赤字が続いた。 2015年には原油価格の下落により辛うじて黒字に転じたものの、勢いは弱く小幅のまま推移している。

 このような貿易収支に代わって、経常収支の黒字を支えているのは、第一次所得収支の大幅な黒字によるものである。

第一次所得収支の黒字は2000年頃までおおむね横ばいで推移していたが、それ以降、リーマンショック後の縮小を除けば緩やかな増加傾向で推移した。
 ところで、この第一次所得収支のうち、特に規模が大きいのは投資収益で、これは直接投資収益と証券投資収益および、その他投資収益に分けられる。

そして、特に近年は輸送用機械器具製造業などの製造業を中心とした日本企業の海外進出拡大を背景に直接投資収益が増加しており、第一次所得収支の約3割占めるまでになっている。

他方、日本の経済は、GDPが520兆円弱(しかし大企業の内部留保は440兆円)、国と自治体の借金が既に1100兆円を突破し、国家財政は国債比率が30~40%を占めるまでになっており、すでにプライマリーバランスは破綻している。
 財政再建をこれ以上先延ばしすることは日本経済の危機を促進することに他ならない。
 このように国内経済の収縮に加え、経常収支の黒字縮小化傾向が常態化している中で、逆に直接投資収益のウェイトが一層高まっているのである。

つまり、この直接投資収益を維持し拡大するためには、日本の海外企業の安定的な展開、利権の確保を政府として担保する事が強く求められているのである。これが専守防衛からの転換を促す大きな要因である。

 自衛隊が侵略の為の軍隊へと変貌するとき、その任務・装備・指揮系統・部隊運用面などにおいても、従来のそれらとは次元の異なる実戦能力の高度化と作戦遂行部隊の拡充が求められる。そして何よりも、自衛隊員そのものと、その「供給源」=募兵の条件となる労働者人民の精神的な動員=意識「改革」、すなわち愛国心と国家への忠誠心を高めるために、あらゆる機会をとらえて民衆を扇動するとともに、教育行政への介入が強められていく。
 戦前と同じように「ヒト、モノ、カネ」の全てが「軍事力」として収れんされる行政の在り方へとシフトされざるを得ない。それは、やがて全人民を国家総動員体制へと駆り立てるものにならざるを得ないだろう。

19年度防衛費 ー 高価な攻撃型兵器の購入で膨れ上がる後年度負担

2019年度予算案は3月2日未明の衆院本会議で、与党などの賛成多数で可決され、19年度防衛予算も成立した。その総額は5,2574兆円であり、5年連続で過去最高を更新した。

 防衛予算は防衛大綱で確定する基本戦略(といってもそれは激動する国際情勢の動向を多方面から分析したうえでの積極的な軍事戦略とはいえず、極めて恣意的でなし崩し的な性格をもつものではあるが…)の下で作成された中期防に基づいて編成されている。

*防衛大綱(防衛計画の大綱)は1976年三木内閣が策定した「76大綱」が始まりで、当初10年を見据えた安全保障政策の基本方針だった。
この時点では「仮想敵」は想定されておらず、「所与防衛力構想」は「基盤的防衛力構想」であった。
 しかし、安倍政権になって4回目(「25大綱」=2013年)の改定からは5年毎の見直しに変更され、ここから中国と北朝鮮を名指しで警戒対象に据えたのである。そして、2018年の「30大綱」では海外派兵を見越して、より現実的な戦闘を想定した「戦傷対処能力の向上を含む教育・研究を充実強化する」という方針が新たに付け加えられた。
*中期防(中期防衛力整備計画)は防衛大綱に基づいて整備される最初の5年間
 の装備計画

 

安倍政権になってからの防衛予算の特徴は高価な攻撃型の兵器・装備項目が増加し、右肩上がりで増額し続けていることである。

 ところで、この予算の内訳を見ると、購入装備品(各種兵器・装備品など)の返済額(後年度負担として計上されている)が予算全体の4割を占め、これに人件費・糧食費・隊内生活関連費などを加えた固定経費では予算全体の8割を占める。
新規装備品の購入、諸施設の維持・建設・運用・整備、各種兵器の修理・交換、隊員の訓練・教育などの関連予算(いわゆる自由枠予算)は残りの2割である。

 f:id:pd4659m:20190504153200j:plain つまり、予算そのものは非常に硬直化していて自由度がない。
 防衛予算の4割を占める後年度負担のせいで、自由枠予算が圧縮されており、自衛隊それ自体の維持と独自的な機動戦力強化のために必要な関連予算は6割にも満たないという構成になっているのだ。
 特に、安倍政権は米国政府の「対外有償軍事援助(FMS)」に基づく、高額兵器の購入を増加させてきた。購入元は、実質的にはロッキード・マーチンレイセオン、ダグラス・ボーイングなどの軍産複合体が中心である。
19年度は最新鋭戦闘機F35A(6機・916億円)、早期警戒機E2D(2機・544億円)、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」(二基・2,352億円)などの購入契約を結ぶものとされている。

 このFMSの契約額は12年度予算(民主党の野田政権時)では1,381億円だったが、19年度予算では、12年度の5倍の7,013億円に膨らんでおり、これが後年度負担を大きく押し上げているのである。

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 防衛省にとって、兵器・装備品の購入元(発注先)は大きくいって自国の軍需企業と米軍需企業の2つである。 戦車・艦船・戦闘機・銃火器・弾丸類・情報通信装置・軍用諸施設や、兵器類の部品などのほとんどは自国の軍需企業(三菱重工IHI川崎重工三菱電機東芝富士通…)が購入元であるが、最先端・高性能の兵器・装備品とその配備・運用にいたるまでは、基本的に米軍需企業が購入元である。

 自衛隊の兵器体系は歴史的にアメリカ軍の「ミニチュア版、模倣」であり、国内の軍需企業がそれらを生産する場合は、米国の軍需企業が占有する各種軍事技術に関する特許権に基づくライセンス生産になることが多い(海自のイージス艦、空自の主力戦闘機ですらそうなのだ)。

 したがってFMS契約に基づく兵器・装備品の購入は、防衛省にとってみれば日本では生産できない高性能な兵器・装備品を調達できるという利点がある一方、それらの価格、納入時期などは米国防総省の都合で勝手に変更される(一般に契約時より高額になるし、納入時期も守られないことが多い)という不利な点がある。また、いずれもアメリカの軍産複合体が占有する特許権と軍事機密で「保護」されており、日本はその運用やメンテナンス、部品調達に関しても米軍当局の直接的管理下に置かれることになる。

 このためFMS契約では、購入した兵器・装備品に随伴してくるアメリカ軍関係技術者の人件費、コンサルタント費、滞在費、渡航費など全てをアメリカ側から要求されるままに日本政府が負担しなければならないのである。そして、こうした巨額の経費の全ては後年度負担として防衛予算に計上されるのである。

 2019年度の防衛予算案は18年度当初比1.3%増の5兆2574億円となり、5年連続で過去最高を更新した。新防衛大綱の目玉となった、海上自衛隊最大の「いずも」型護衛艦2隻を事実上の航空母艦に改修するのに必要な調査費として、7000万円が計上された。
 改修対象の護衛艦は「いずも」と「かが」の2隻。防衛省によると、短距離離陸・垂直着陸能力を持つ米最新鋭ステルス戦闘機F35Bの着艦時に発生する高熱に対応する甲板塗料の耐熱性試験や、発着時の騒音が艦内の居住空間に与える影響について調査を行うという。

同じく大綱に明記された陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は1基1,237億円と見積もった。防衛省は7月に1基約1,340億円との見通しを公表しており批判が高まっていた。そのため巡航ミサイルの迎撃機能追加を見送り減額した。
 また搭載するシステムとレーダーは米ロッキード・マーチン社から直接購入するため、今回の売却額には含まれていない。これらの経費は20年度以降に先送りされた。
 19年度当初予算に計上されているのは、レーダーシステムを除いた1基当たりの1,237億円、それに取得関連経費を加えた総額1,757億円(契約ベース)ということである。

 

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 米政府からの有償軍事援助(FMS)による調達経費の総額は7、013億円。イージス・アショアのほか、F35A6機(681億円)や早期警戒機E2D9機(1,940億円)などが含まれる。19年度の新規契約に伴う装備品の後年度負担は、今年度より2割増の2兆5781億円が見込まれている。

 防衛装備品の支払いを次年度以降に繰り越して積み上がったローンの残高が、2019年度は前年から4000億円増え、5兆円を超す見通しで、借金の返済額だけで年間の防衛費約5兆3000億円の4割を占めることになる。

このようにFMSによる調達費が増え続け、それが後年度負担となって財政全体に重くのしかかっているのが今日の姿である。

 まさに兵器のローンは順次軍需企業に返済していくのであるが、それが高額になってくると防衛予算の硬直化が進み(社会通念でいえば借金で首がまわらなくなり)、自衛隊の日常的な維持・訓練・諸作戦活動、装備品や機材の修理やメンテナンスなどに必要な「自由枠予算」を圧迫して、自衛隊の通常のルーチン活動にも支障をきたすようになる。

安倍政権は、自衛隊の攻撃型軍隊化を急ぐあまり、自衛隊員が活動する環境や人命には目もくれようとない。ここに「自衛隊員が気の毒」とか言いながら、9条改憲を主張する本質が現れている。

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安倍政権は膨張し続ける後年度負担を誤魔化すために、本予算で不足する後年度負担分を補正予算につけ回すということをやっている。本来、補正予算は災害発生時や緊急事態発生時などに編成され、防衛省関連ではこれまで災害出動などの補填として行われたに過ぎなかった。安倍政権は兵器ローンの返済を補正予算に組み込むという暴挙を行っているのである。18年度予算ではP1哨戒機、C2輸送機などの後年度負担分総額3935億円が組み込まれた。そのため19年度防衛予算では、防衛省に課せられる後年度負担は実質的には5.7兆円超ということになる。この補正予算への兵器ローンのつけ回しというカラクリ的手法一防衛省による補正予算の第2の財源化-は、表向きは防衛予算の増加率を少なく見せるという形で、今後も踏襲、増加していくであろう。

 それとは別に、19年度防衛費では在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)も1,987億円と、前年度より10億円増えている。

積極的に「米軍事力の一部」として自衛隊の外征軍隊化を狙う安倍政権

安倍政権がFMSに基づく米軍産複合体からの高額・高性能な兵器・装備品を積極的に購入し続けることが示すものは何か。

それは共通の装備、共通のシステムを整えることによって日米共同作戦態勢における米軍の指揮権の維持・強化、さらに一歩進んで日米合同指揮所体制の強化、そこでの積極的コミットを狙っているということである。

もとより、今の自衛隊の装備(「いずも」型一隻にF35Bを10機ぐらい搭載しても、空中給油機や早期警戒機、早期警戒管制機、大型輸送機などが整っていなければ制空権も、継戦能力も十分とは言えない)は独力で海外展開=侵略戦争を行えるようには至っていない。
 あくまでも「米軍の一部」として参戦し、そこでの部隊運用や指揮の実践を通して侵略軍隊へと飛躍しようとしているということだ。

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無人警戒機グローバルホーク(GH)3機一総額629億円で、20年間の維持整備費は2449億円。このGHの導入に関しては、当初、防衛省整備計画局は「実質的に導入中止」を確認・決定していたのであるが、首相官邸国家安全保障会議が「日米同盟」関係の維持・強化という観点から防衛省整備計画局の確認・決定を反故にして導入することを決定したのであった。
 ※ なお、このGHは、既に1機を導入していたドイツは運用コストが高いという理由で12年度の時点で追加導入を断念したという代物である。

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●戦闘機に搭載可能な長距離巡航ミサイル(射程900km)、高速滑空弾、極超音速ミサイル(音速の5倍)の3種類を購入・配備。

 ※ 米国防省はこれらミサイルの販売を許容していなかったのであるが、しかし日本政府が集団的自衛権の行使容認を閣議決定したことを見て、更には水陸機動団(日本版海兵隊)の創設とその陸自西部方面隊への配備、「いずも」の攻撃型空母への改造計画という防衛省の一連の動きを見て、これを容認したといわれている。

 こうしたことを見ても、米帝国主義は、目下の同盟国である日本が専守防衛の立場を転換させ、海外の「敵国」(具体的には中国と北朝鮮なのであろう)に対して共同作戦行動を担い得るパートナーとして認定したものと考えられる。
まさに「同盟国やパートナー国に対しては、防衛のコミットメントを維持し、戦力の前方展開を継続するとともに、責任分担の増加を求めている」(「30大綱」)というアメリカの要請に積極的に応えたものが「30大綱」「31中期防」だと考えてよいだろう。